第八編 転換期の札幌
第一〇章 国家神道と宗教の展開
第一節 国家神道と神社
一 国家神道と札幌神社、護国神社
敬神思想の強化は、もちろん学校教育の場にも及んでいたが、実際的なそのあり方を中央創成国民学校(現在の創成小学校)の「学校日誌」からうかがってみることにしよう。「学校日誌」には戦時下における学校内の行事が克明に記載され、少国民がどのような軍国教育を受けていたのかをよくうかがい知ることができる貴重な史料であるが、敬神思想の強化に関する事項だけを取り上げても戦争が激化してくる十七年の場合、以下のような神社参拝が多くみられ、宮城遥拝や神事、英霊への黙禱などが頻繁に行われていたことがわかる。なお、同校の神社参拝は三吉神社への参拝である。
二月七日(土) 大詔奉戴日の前日行事として宣戦の詔書奉戴式及び全校生徒神社参拝。 二月十七日(火) 祈年祭祈願式。 二月十八日(水) シンガポール戦の戦捷祝賀式及び神社参拝。 三月七日(土) 宣戦詔書奉読式及び代表五年生神社参拝。 三月二十一日(土) 春季皇霊祭。修了式後神社へ報告。 四月一日(水) 入学式。宮城遥拝。 四月三日(金) 神武天皇祭。 四月八日(水) 大詔奉戴日。二年生以上神社参拝。 四月二十五日(土) 靖国神社臨時大祭遥拝式。 四月三十日(水) 靖国神社例祭。代表が札幌護国神社参拝。 五月十五日(金) 三吉神社例祭。六年生参拝。 六月五日(金) 北海道護国神社例祭につき英霊に対し黙濤。 六月八日(月) 大詔奉戴日。全校生徒神社参拝。 六月十五日(月) 札幌神社例祭。代表六年生参拝。 七月六日(月) 護国神社例祭。代表六年生参拝。 七月三十日(木) 明治天皇三十二年祭遥拝式。 九月八日(火) 大詔奉戴日。代表五年生参拝。 九月十五日(火) 満州建国一〇周年慶祝式。宮城遥拝・訓話・黙禱。 九月十八日(金) 公会堂にて皇国敬神教育大会。 九月二十四日(木) 秋季皇霊祭。 十月十五日(木) 靖国神社臨時大祭。代表六年生が札幌護国神社参拝。 十月十六日(金) 靖国神社臨時大祭遥拝式。 十月十七日(土) 神嘗祭。 十一月二十三日(月) 新嘗祭。 十二月八日(火) 大東亜戦争一周年記念日。代表五年生参拝。 十二月二十五日(金) 冬季訓練第二日目。全校生徒参拝。 これをみるとまず、毎月八日に実施された大詔奉戴日の半数には、三吉神社への参拝が行われていたことがわかる。これには全校生徒で参拝する場合もあれば五、六年生が代表して参拝することもあった。また札幌、三吉、護国神社の例祭にも六年生が代表で参拝していたが、靖国神社などでの英霊祭祀に対しても札幌護国神社への参拝、遥拝式、黙禱などが行われており、学校教育の場にも国家神道が網の目のように張り巡らされていたことが判明する。この他にも、公会堂で行われた戦死者の合同葬の英霊祭祀にも代表が必ず送られており、少国民にも敬神教育の強化と「聖戦」の影響が強くなってきていた。 ![]() 写真-2 札幌神社の例祭に参拝する学校生徒たち |