第七編 近代都市札幌の形成
第一〇章 宗教活動の社会的展開
第二節 寺院と「市民仏教」の展開
一 寺院・仏教と地域社会
『北海道農場調査』(大2)には諸町村の二一農場、『東北帝国大学農科大学農場成績報告』(明42)には札幌村に所在した第三農場、豊平町大字平岸村簾舞の第四農場、これらの小作戸の宗旨が記載されている。いまそれをまとめたのが表7である。
これによると、浄土真宗が七二パーセントと圧倒的な高率をしめている。各農場の小作戸には富山県出身者が多いために上記の結果となっているのであるが、これはある程度農村部の宗派割合の傾向を示しているとみることができる。それと同時に、農村部には浄土真宗の寺院・説教所が多いために、また近隣の入植者の多くが同宗であるために歩調を合わせて、元来郷里では必ずしも同宗の檀家ではなくても、便宜的に宗旨換えする動向も推察されてくるのである。 一方では集団で入植した場合、郷里の宗旨を守り通すケースもみられた。表5には徳島県も記載してあるが、同県人が集中的に移住したところは篠路村の興産社農場である。同農場を引き継いだ谷農場には一〇一戸の小作がいたが、徳島県に郷里を持つ者は六七戸おり、真言宗は六四戸であった。同県出身者はこぞって郷里の宗旨を守り通したといえるだろう。ただし、篠路村には真言宗の寺院も説教所も所在しておらず、聞法・葬儀などは区内の寺院に依存していたようである。 |