札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ

新札幌市史 第3巻 通史3

第七編 近代都市札幌の形成

第七章 社会生活の変貌

第二節 職業の安定と貧困問題

二 社会事業の公共化

 北海道庁が十年一月一日より社会課を新設して、社会事業を公的に推進したのを受けて、同年札幌区でも庶務課庶務係で、区営住宅建設、公設市場、職業紹介、窮民救助その他についての社会事業的業務を分担した。はじめて札幌区に社会係が設置されるのは十一年四月を待たなければならないが、それより先十年六月には札幌区豊平町の細民街の改善計画に着手するなど、区は都市計画上積極的に何らかの対策を講ずる必要に迫られていた。

写真-5 豊平町の細民街と細民統計調査員(大11)

 そのような折、北海道庁社会課では、社会事業施設建設計画として保導委員設置を立案、道内六区に参考資料の調査を委託してきた。これが十一年二月中実施された札幌区細民調査である。調査項目はおもに、「細民区内分布調、世帯ニ於ケル人員、年齢及体性ニ分チタル人員(労働能力者及不能力者調)、縁事身分調、生国ニ分チタル世帯及家族、職業ニ分チタル世帯主ノ来札目的、貧困ニ陥リタル主因(男女)、世帯主在札年数別、性別年齢ニ分チタル有業無業調、職業ニ分チタル体性及世帯別、住宅清潔状況、住宅床高調、寝具、住宅室数及畳数、世帯ヨリ見タル読書力、入浴及理髪、日用食料品大要別、炊事場及便所、嗜好ニ分チタル世帯員、娯楽ニ分チタル世帯員、男世帯ノ月収金高調、女世帯ノ月収金額調、世帯主所有財産有無調、家賃、家族健康状況、質入戸数及金額別、宗旨及神棚仏壇ノ有無」といった二八項目にわたっていた。

写真-6 細民調査における「動態調査簿」

 周知のとおり、細民調査は明治四十四年八月まず内務省によって東京市を対象として実施され、続いて東京市(大正九年)、岡山県(大正十年)と調査が行われていた。それら多くの都市細民は、日清戦争後の不況を契機に都市に集住しはじめ、下層社会を形成し、日傭、土方、人力車夫、縁日商人、下等の各職工、紙屑拾い、下駄直し、野店講釈、棒手振りなどを営み、そのほか種々の内職を行っていた。
 貧困者に対して当局者や多くは、彼らが怠惰、濫費、卑俗などの性質にあるとし、それが資本の本源的蓄積の強行に基づく必然の犠牲である点をみすごしてきた。このため、篤志家たちの慈善に頼ってきたが、日露戦争後において社会政策上明らかに社会問題であると認識され、公的機関による救護の対象になってきた。札幌区における細民調査も先行調査府県・市にならった形で行われたに違いないが、調査にあたった区の担当者は『札幌区細民調査統計表』をまとめるにあたり、札幌区長代理助役前田宇治郎名で次のように述べた。
本調査ハ札幌区内細民ノ状態ヲ調査スル目的ヲ以テ施行シ其項目ヲ二十八項ニ分チ吏員ヲシテ各戸別ニ調査セシメタルモ事ヤ本区ニ於ケル創始ノ事業ニ属シ而カモ短時日ニ終了シタルモノナレバ固ヨリ多少ノ瑕瑾ナキヲ保セザルナリ若シ本調査ニ依リテ区内細民ノ実情ヲ知リ併セテ補導救済ノ実ヲ挙グルノ一助トナルヲ得バ之レ幸甚トスル所ナリ

 細民の生活状態は、本節一「生活難と民衆」で紹介したとおりであった。札幌区も細民対策を具体的に推進することを迫られていた。