札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ

新札幌市史 第3巻 通史3

第七編 近代都市札幌の形成

第四章 資本主義確立期の経済

第二節 商業と流通

三 各種商業者の動向

 明治末から大正期の札幌には、商業者、職人の組合が多数設立された。明治四十年に存在した組合を表14にまとめた。ところで、法律に基づく組合はこの時期にほぼ出そろっていた。明治十七年十一月の同業組合準則に基づく「準則組合」は、地区内業者の三分の二以上の同意による強制加入組織であり、三十三年四月の重要物産同業組合法に基づく「同業組合」は、農商務大臣の命令による強制加入機能をもった。また、明治三十三年九月施行の産業組合法に基づく信用・購買・販売・利用事業を行う産業組合があった。表の四四組合のうち、北海道庁員購買組合札幌家禽生産販売購買組合は、産業組合法に基づく購買(販売、購買)組合で、ほかの商工業組合とは性格を異にする。また、重要物産同業組合法に基づく同業組合はゼロ、同業組合準則に基づく準則組合は札幌白米雑貨商組合札幌豆腐商組合札幌木材商組合札幌浴場組合札幌果実蔬菜商組合札幌薬業組合札幌左官職組合札幌荷馬車組合の八組合だけである(北海道庁統計書 明41)。したがって、産業組合二と準則組合八を除いた三四組合は、任意組合である。また札幌畳職工組合は、ほかに畳製造業組合や畳職営業組合があることから、職工のみの組合と考えられ、労働組合の性格をもつものであろう。商業者の組合と工業者・職人の組合は分離することが難しいが、多くは商業者関係である。
表-14 札幌区の同業者団体(明治40年)
名称設立年月組合員数
北海輸出組合明40年6月93人
札幌呉服太物商組合37. 118
札幌農産商組合37. 751
札幌白米雑貨商組合35. 768
札幌木材商組合29. 526
札幌薪炭商組合39. 130
札幌銅鉄商組合36. 119
札幌薬業組合23. 46
札幌売肉営業組合30.1123
札幌果実蔬菜組合37. 773
札幌乾物青物商組合39. 126
札幌質屋組合28.1020
札幌古物商組合19. 582
札幌綿打組合40. 312
札幌履物商組合38. 247
札幌外五郡酒造組合32. 125
札幌醤油製造業組合32. 216
札幌鉄工業組合41. 168
札幌馬具製造販売組合41. 113
札幌豆腐商組合35.1262
札幌提灯職組合39. 418
札幌菓子商組合41. 157
札幌履物製造組合40.11人数不明
共愛会札幌染物業組合39. 213
札幌大工職組合40. 6115
札幌石工店組合35. 14
札幌左官職組合35. 323
札幌建具指物営業組合34. 526
札幌畳職営業組合40.1120
札幌鉄道貨物運送業組合40.124
札幌荷馬車営業組合38. 513
札幌人力車営業組合20. 1216
札幌旅人宿組合25.1044
札幌蕎麦営業組合38. 158
札幌浴場営業組合38.1042
札幌畳製造業組合40. 9
札幌理髪業組合15.10106
札幌活版印刷業組合39. 16
札幌桶職組合38. 820
北海道庁員購買組合41. 5205
札幌畳職工組合40. 220
札幌家禽生産購買販売組合40. 870
札幌石工職組合41. 166
札幌繰製糸組合41. 423
札幌商業会議所第1回年報』(明41)より作成

 大正九年に存在した五七組合のうち、重要物産同業組合法に基づくもの三、同業組合準則に基づくもの一三であり、ほかの四一組合は任意組合であった(札幌区統計一班 大9、北海道庁統計書 大9)。この期間を通じて任意組合が主流であったのである。ところで、当時の新聞では「同業組合」「商業組合」という名称を用いているが、歴史用語としては、前者は重要物産同業組合法に基づく組合を、後者は昭和七年の商業組合法に基づく組合をさす。それゆえ、この時期の札幌の組合は本文では単に「組合」、あるいは同業者団体とよぶことにする。
 これらの組合は、「単に相互間の親睦機関として、毎年一月に於て懇親会を兼ねたる総会を開き、形式上組長副組長を選挙するに止まり居れば、其間何等制裁なきは勿論にして、同業者間研究する等の事なき為め、全く名実相伴はざるものなり…」(北タイ 大1・10・25)といわれていた。しかし、単なる親睦組織にすぎないという評価は正しくない。この時期の商業者の組合の活動事例をいくつか紹介しよう。
 年に一度の総会を開き親睦を深める以外に、同業者団体には価格協定を結ぶという機能があった。札幌履物商組合は、明治四十年二月に「材料騰貴ノ為メ組合同業者一同協議ニ依リ来ル三月一日ヨリ左ノ通直上ケ実行致候」として「栓下駄大形相形金八銭、雑木下駄大形相形金八銭五厘右相定候事」を広告している(北タイ 明40・2・27)。このような組合決議に基づく値上げ(値下げ)広告は、このほかに札幌履物商組合(明40・10・19)、札幌豆腐商組合(同11・30)、札幌白米卸商組合(明41・1・25)、札幌菓子商組合(同3・8)、札幌区外五郡酒造組合(同3・23)、札幌製氷組合(同5・23)、札幌味噌製造組合(大2・10・1)、札幌区外五郡酒造組合(同11・5)、札幌区豆腐組合(同12・1)、佐渡味噌同業組合(同12・14)、札幌牛乳組合(大4・11・30)などの例がある。また、四十四年九月七日に解散を決めた札幌売肉商組合は、その理由として「元来同組合存立の目的は、一定の売肉価格を協定し組合員をして各協定価格に基きて販売せしめ、以て悪競争の結果相互傷くの弊を除かんとするにあるも」(北タイ 明44・9・9)組合員のなかには協定を無視して下等の肉を上級に見せかけて安売りするものがいることをあげている。このように価格協定は、同業者団体の重要な機能の一つであった。
 同業者団体の機能の二つめとして流通過程の合理化があげられる。札幌呉服太物商組合は、組合員が毎月二円ずつ積み立てた積立金をもって、商品仕入れとさらなる貯蓄に宛てようと別組織「札幌呉服太物商貯蓄会」を組織した(北タイ 明43・2・25)。別組織としたのは同業組合、準則組合は貯金・貸付など信用事業を行うことが認められていなかったためであろう。札幌呉服太物商組合は準則組合であった。四十四年三月設立の札幌陶器商組合(組合員二〇人)は、粗物の共同廉価購入(仕入れ)を目的としていた(北タイ 明44・3・22)。また小間物化粧品商たちは、組合ではないものの「札幌小間物化粧品同盟会」を組織し、「地方卸商の圧迫に堪ず曩に応分の月掛金を積立て専ら化粧品其他の共同仕入を企て」た(北タイ 明45・5・25)。
 そして、三つめに当局の業者に対する指導、監督の受け皿としての役割があげられよう。大正二年一月十二日に開かれた札幌古物商組合総会では、大熊札幌警察署長が伝染病汚染の恐れのある古物の取引に注意すること、消毒を励行することを訓示した(北タイ 大2・1・13)。また六年八月一日開催の札幌菓子商組合総会では、道庁衛生課後藤警部、札幌警察署松川警部補の衛生講話がなされた(北タイ 大6・8・3)。ところで、同業組合・準則組合は価格協定を禁じられており、大正期にも価格協定を禁ずる旨の農商務省次官通牒が繰り返し出された。しかし、札幌菓子商組合などは道庁、警察署吏員臨席のもとに総会を行いながら、日時は異なるが総会で価格引上決議をなし、新聞に発表している(北タイ 大6・11・22)。こういう面に任意組合の柔軟性が見られるのである。