札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ

新札幌市史 第3巻 通史3

第七編 近代都市札幌の形成

第三章 産業化の模索と進展

第四節 札幌の畜産と酪農

二 乳用牛の導入と生産主体

 こうした問題を背景にしつつ、育児・病人食として、あるいは軍用食料として煉乳製造が開始される。本格的な製造は、明治四十三年の札幌煉乳場(資本金五万円、豊平)と大正三年の北海道煉乳株式会社(同二五万円、苗穂)によるものである。札幌煉乳場は、蟹缶業者が三十二年設立の札幌煉乳合資会社の業績を引き継いで設立したものであった。大正六年に静岡県の花島煉乳場と合併して極東煉乳(株)となる。北海道煉乳は、札幌農学校教授の橋本左五郎の技術指導で設立され、株式は酪農民の引受けを想定したが集まらず、政財界の有力者の引受けとなった。それでも農民代表として先の宇都宮仙太郎が取締役に就任した(北海道における資本と農業)。大正期に入って本格的な製造が開始される。表31は酪農製品の生産の動向を示したが、大正元年からの煉乳生産の急速な伸びが明らかである。そうなると、逆に原料乳が不足し、煉乳資本は特約的組合を組織するようになる。極東煉乳の石狩産乳組合(大正末年)と北海道煉乳の札幌牛乳販売組合(大正四年)である。このように、煉乳資本は農家を一方でまき込みながら、農家の副業酪農を拡大していくが、そのなかで生じた諸問題解決のためには農民自身の産業組合による加工販売事業が次の課題として浮かびあがってくるのである。
表-31 酪農製品の動向(札幌郡,札幌区,単位;斤/円)
 チーズバター煉乳合計
数量価格数量価格数量価格価格
明39007,9005,607005,607
 40007,2005,115005,115
 415002506,8005,250005,500
 425002507,2815,327005,577
 430015,57710,7430010,743
 440017,89212,597005,689
大 12226345,17429,778205,37441,75571,596
  22156054,40734,892271,05549,81084,762
  31,37051650,85330,528130,64824,56355,607
  41,15546261,32142,581507,168133,508176,551
  564325799,25161,0771,255,811263,307324,641
  645821892,50768,3161,482,987370,596439,130
1.大正4,5年は月寒の畜産試験場,北大農場を含む。明記されていないが,それ以前も同様であると考えられる。
2.『北海道庁統計書』より作成。