札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ

新札幌市史 第3巻 通史3

第七編 近代都市札幌の形成

第一章 札幌区の成立

第二節 区役所と区会

二 区会の開設

 札幌の近代化過程で北海道区制が重要な意義をもつのは、制限付とはいえ住民の参画する議会が開設されたことにある。総代人制度を取捨し札幌区会を成立させる経緯をここでみることにする。
 北海道庁は区制にもとづき、区会議員選挙順序と選挙資格調査心得を定め、三十二年十月一日現在で選挙人名簿を調整し、十月十一日から一週間縦覧に供したあと、十一月二十日告示、十一月三十日から三日間にわたり三、二、一級の順で区会議員選挙を実施すると発表した。この趣旨は札幌区告示第一~三号(いずれも十月一日付)、一〇号(十一月二十一日付)として公表されたが、議員定数に関しては選挙順序にそっておらず、区制第三八条のとおり二四人にきまった。区制第三九条により札幌区公民(四四頁参照)は原則としてすべて区会議員の選挙権を有するから、十月一日の名簿調整の時点で三一五人が選挙人である。それを、①直接区税の納税が最多の者をあわせて、選挙人総員の納める税額の三分の一にあたる者を一級、②一級選挙人を除き、直接区税の納額が多い者をあわせ、選挙人総員の納める税額の三分の一にあたる者を二級、③このほかの選挙人を三級と区別する(区制第四〇条)。これに従うと札幌区の選挙人中一級は一二人、二級二七人、三級二七六人となる。選挙権を有する公民のうち、北海道庁の官吏、札幌区の有給吏員、検事警察官及収税官吏、神官僧侶その他諸宗教師、小学校教員は被選挙権を持たない(四三条)。区会議員は全被選挙権者から、三級にわけられた選挙人による投票によって三分の一の人数ずつ(各八人)選ばれることになる。
 札幌区の選挙人名簿の縦覧は、区役所で十月十一日午前九時から一週間行われたが、閲覧に訪れる者はきわめて少なく、「札幌区の自治制に対する観念幼稚なるが為めにあらずや」(道毎日 明32・10・13)と報じられた。しかし縦覧によって名簿からの脱漏、級別変更の申立があり、道庁において調査裁決の結果、初の区会議員の選挙人は一級一二、二級五一、三級二五四人の合計三一七人と決まった。そこから道庁官吏等を除いた被選挙権者は二八九人である。この人数を最後の総代人選挙と対比すれば、被選挙権者で一五一人の大幅増をみたが、選挙権者は一五九人の減少となり、制限のいたって強い代議制であったことがわかる。
 区会議員選挙戦は、札幌実業協会憲政党札幌支部によって、予選制の主導権を争う運動として展開された(政党政派は後述)。憲政党派は区会議員予選会を十一月七日に料亭松月で行い、三級選挙の候補者として山崎孝太郎森源三谷七太郎、岡田左助、花村三千之助宇野季吉、大竹敬助、笠原文平の八人を推薦した。一方の実業協会派は投票日直前の十一月二十七日に候補者を発表するが、その三級選挙に推薦されたのは対馬嘉三郎森源三谷七太郎足立民治本郷嘉之助富益頼道南部源蔵笠原文平の八人である。この中には両派にまたがる候補者が三人いることでも明らかなように、推薦された被選挙権者はいずれかの党員会員とは限らず、当選を望まぬ人をも含み、選挙権を持たない多くの区民をまきこんだ世論誘導的な人物銓衡表づくりであった。また両派には区税と区債の考え方に相違があるものの、ほとんど政策論議らしきものはなく、もっぱら新聞紙面による個人的言動の中傷合戦に終始した。
 投票は十一月三十日から三日間、毎日午前八時から午後二時まで豊平館で行われた。一日目は三級選挙人の投票で、定員の三分の一(八人)の議員が選出された。結果は実業協会派の楽勝ムードをくつがえし、憲政党派の中心人物が予想外の票を得るとともに、中立派とはいえ、憲政党と深い関わりを持つ二候補者がともに最多票を獲得した。このため急遽両派の妥協工作がすすめられ、二、一級選挙に向けての予選調停がはかられ、選挙戦のしこりを少しでもやわらげ、区会開設後の円滑な運営を目論むが、両派による予選制に対する批判も生じた。
 こうして決定した初の区会議員二四人の氏名は表6のとおりである。その全員につき派に分けることは妥当でないが、札幌区役所職員が選挙結果を東京にいる園田道庁長官へ打電した時点の判断によって表を作成した。なお初選挙の投票率は三級六〇・二パーセント、二級八〇・四パーセント、一級五八・三パーセントで、平均七一・〇パーセントである。また当選した二議員と候補に名を挙げられながらも当選しなかった二人のあわせて四人から、それぞれ選挙不当無効の訴願が道庁長官に出されたが、翌三十三年二月七日に裁決があり、いずれの訴願も認められず選挙を有効と決定した。
表-6 第1回区会議員支持派別名簿
3級2級1級人数
実業協会派対馬嘉三郎(101)上野正(26)南部源蔵(6)17
足立民治(101)大井上輝前(24)大島喜一郎(6)
本郷嘉之助(87)藤井民次郎(24)久慈勘吉(6)
冨益頼道(79)西田守信(22)本間国蔵(6)
笠原文平(72)嘉納久三郎(21)新田由平(3)
伊藤辰造(19)
宮沢文次郎(19)
憲政党派山崎孝太郎(90)花村三千之助(4)4
宇野季吉(4)
冨所広吉(4)
中立派谷七太郎(162)田中重兵衛(26)3
森源三(161)
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