上述のように、旧
開拓使の諸事業は関連する諸省・府県に分轄せしめられたのであるが、しかし管轄が分散したことによって、特に
北海道内の諸事業においてはかえって事務・事業の管理ならびに運営には円滑を欠く結果をもたらした。加えて
北海道開発に不可欠な道路・航路・電信・物産販売などの統一的事業計画にも障害を招いた。
これらの点について、十五年中に来道視察した要人ら、特に主務省の西郷農商務、佐々木工部、山田内務の諸卿らは相次いで個別ないしは連署をもって意見を陳述している(十五年十二月佐々木「
北海道工場処分の儀に付上陳」、十六年一月西郷・山田・佐々木「
北海道諸事業維持方法建議」、十六年六月山田「
北海道及陸羽諸県巡視復命書」等)。ここにおいて、現今の諸事業分轄運営ではその所轄諸事業すらも継続維持することは困難であるとし、ここに諸事業を統轄して運営する新たな組織の創出を提議するに至った。
このような動向を背景に道内の工部・農商務両省管轄の諸事業を総括的に管理運営する機関として、新たに農商務省管下に
北海道事業管理局を十六年一月二十九日に設置したのである。この管理局長には前開拓大書記官で農商務大書記官の
安田定則が就任した。そして二月十二日に農商務省は、農商務省各局処務規程中に第一九条として
北海道事業管理局処務規程を追録した。この規程によると、本局に整査・会計・物産・庶務の四課が置かれ、また札幌に農業事務所・工業事務所・炭礦鉄道事務所・農学校、それに七重農工事務所、
根室農工事務所と紋鼈製糖所を設けてその各種事業を分管させることとしている(公文録 農商務省)。この事務所所属の各種
事業場は、十七年五月に一部
事業場名の改称および分合がなされ、さらに同年六月「緩急得失ヲ考覈」して存廃・伸縮が謀られた。それによると美々缶詰場と陸運改良掛が廃され、札幌の博物場と製物試験場が
札幌農学校へ転属され、また味噌醬油製造場が払下げの対象とされた。さらに事業の拡張を目指したのは札幌の麦酒醸造場・製粉場に大野
養蚕場で、逆に縮小は石狩・厚岸・別海の各缶詰場に札幌製網場であった(同前)。以上の
農商務省北海道事業管理局所轄の事務所ならびにそれらに所属する
事業場を、その改称・転属を含めて示すと表1、また、札幌の諸工場の営業状況を示すと表2のとおりである。
工 場 | 機関 | 役員 | 職工 | 1人平均日給 | 職員年給料計 | 薪 | 原品価格其他雑費 | 年給以下金額合計 | 製造価格 |
数 | 馬力 | 役員 | 職工 | 役員 | 職工 | 量 | 価 |
札幌紡織場 | 蒸気1 水車1 | 9 | 7人 | 男 8人 女73 | 0円68銭 | 男35銭 女14 | 1738円 | 男839円 女3128 | - | - | 9494円 | 15199円 | 10341円 |
札幌製粉場 | 水車1 | 12 | 2 | 7 | 0.52 | 37 | 381 | 520 | 9831貫 | 140円 | 1976 | 3017 | 2848 |
札幌鉄工場 | 蒸気2 水車1 | 40 | 9 | 42 | 0.73 | 48 | 2394 | 7257 | 17692 | 296 | 22724 | 32671 | 9733 |
札幌木工場 | 蒸気1 水車2 | 123 | 17 | 64 | 0.65 | 57 | 4043 | 8196 | 5671 | 159 | 19831 | 32229 | 20038 |
札幌葡萄酒醸造場 | - | - | 3 | 15 | 1.52 | 65 | 1662 | 1933 | - | - | 14484 | 18079 | 102 |
札幌麦酒醸造場 | - | - | 4 | 14 | 1.42 | 38 | 2072 | 1882 | - | - | 9628 | 13582 | 14102 |
札幌味噌醤油製造場 | - | - | 2 | 11 | 0.44 | 37 | 322 | 1237 | - | - | 5142 | 6702 | 6082 |
札幌製網場 | - | - | 4 | 5 | 0.49 | 43 | 720 | 656 | - | - | 4242 | 5618 | 3516 |
厚別木挽場 | 水車2 | 82 | 6 | 18 | 0.56 | 39 | 1219 | 1847 | - | - | 2677 | 5743 | 2728 |