札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ

新札幌市史 第2巻 通史2

第五編 札幌本府の形成

第八章 札幌県と札幌

第一節 札幌県の行政

二 北海道事業管理局の設置と札幌県の施政

 上述のように開拓使一〇年計画定額の満期を機に、廃使置県への準備が着々と進められていた。そして明治十五年二月八日、太政大臣・内務卿の連署をもって「開拓使ヲ廃シ函館、札幌、根室ノ三県ヲ置ク 但管轄区画ハ追テ布告スヘシ 右奉勅旨布告候事」と、三県分置が令せられるに至った。同時に開拓使に対して三県へ土地人民等を引き渡すべきこと、また三県に対しては開拓使より土地人民等を受け取るべきことを指令している。
 ところで右の布告をみると、「管轄区画ハ追テ布告スヘシ」とあり、いわば三県の管轄区域が未決定のまま、三県の分置を宣しているのである。当時立法府として元老院があった。法律制定に際しその元老院の関与の仕方として、議案に対する「議定」と「検視」との二種がある。本来は元老院の評議(議定)を経て法制定の運びとなるのであるが、緊急の施行を要する場合は、政府が先に布告してから爾後に元老院の「検視」を経るという事も可能であった。他方十一年七月の元老院に対する指令では、「上奏ノ議道国府県郡区ノ分合廃置及名称ノ変更ハ、其院ノ議定ニ付セラルヘキ事」(公文録 太政官)とあった。この三県分置の布告に際し、政府は「議定」という元老院への指令にもかかわらず「検視」の方法を採用したのである。その理由として、太政大臣が元老院議長に宛てた通牒によると「別紙開拓使ヲ廃シ函館札幌根室ノ三県ヲ置クノ儀ハ其院議定ニ付セラルヘキ件ニ有之候処、右ハ急施ヲ要スル事情有之特ニ本件ニ限リ便宜布告ノ後検視ニ付セラレ候条此旨及通牒候也」(同前)と、本来議定に付すべき案件を「急施ヲ要スル事情」によって「本件ニ限リ」検視としたということである。その内実は不明であるが、かなり無理をしての布告制定の過程であったことがわかる。したがって三県管轄区画の決定も後回しになったものであろう。
 その管轄区画は、議案が十五年二月十四日に参事院より上申、二十日元老院へ下付、二十三日元老院より議定奉還、二十四日参事院より審査奉還、二十五日太政官が裁可を仰ぐという正常な法的手順を経て、十五年二月二十八日「函館札幌根室三県管轄区画并県庁位置左ノ通之ヲ定ム」として布告されたのである。その管轄区画は左の通りであった。
函館県 県庁位置 渡島国亀田郡函館
 管轄 渡島国 一円
    後志国ノ内八郡 磯谷郡 歌棄郡 寿都郡 太櫓郡 瀬棚郡 久遠郡 奥尻郡 島牧郡
    胆振国ノ内 山越郡
札幌県 県庁位置 石狩国札幌郡札幌
 管轄 石狩国 日高国 十勝国 天塩国 一円
    後志国ノ内九郡 小樽郡 高島郡 余市郡 美国郡 積丹郡 古宇郡 忍路郡 岩内郡 古平
    胆振国ノ内七郡 虻田郡 有珠郡 室蘭郡 幌別郡 勇払郡 白老郡 千歳郡
    北見国ノ内四郡 宗谷郡 枝幸郡 利尻郡 礼文郡
根室県 県庁位置 根室根室根室
 管轄 根室国 釧路国 千島国 一円
    北見国ノ内四郡 紋別郡 常呂郡 網走郡 斜里郡
(法令全書 明治十五年)