札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ

新札幌市史 第1巻 通史1

第一編 札幌の自然史

第四章 台地と扇状地

第四節 埋積された台地

 八軒ベッドとは八軒観測所のボーリングで、基盤の下野幌層(第三章参照)と上位の山口ベッドの間(深度五三~八五メートル)にある細砂とシルト・粘土の互層である。深度八三メートル層準からマガキ・ヌマコダキガイ・サルボウなどの貝化石がみいだされる。とくに、現在、北海道近海には生息しない暖流系のサルボウが含まれることが注目される。この貝化石包含層の花粉化石組成は、ツガ属、ニレ属、コナラ属、カバノキ属、ハンノキ属が多く、その他クルミ属とわずかであるが、ブナ属を含み、温帯性落葉広葉樹が優占している。このように、八軒ベッドの堆積期は比較的温暖であり、貝化石の14C年代から三万四〇〇〇年前ころである。
 山口ベッドは山口観測所のボーリングにおいて、深度約一四〇メートルで鮮新世の西野層(第二章参照)を不整合におおっているが、分部越、樽川、石狩I観測所では下野幌層(前出)を不整合におおっている。八軒では、前記のように八軒ベッドの上位に連続的に累重している。分布はかなり広く、層厚も最大一〇〇メートルにも達する。このベッドに含まれる貝化石は、エゾタマキガイ・ホタテガイ・エゾワスレガイなど二六種の寒暖混合群集である。花粉化石群集はアカエゾマツあるいはエゾマツ、トドマツで、わずかにグイマツを含む寒冷気候下のものである。堆積時期は、貝化石の14C年代値から三万二〇〇〇~二万九〇〇〇年前ころと推定される。
 樽川ベッドは主として海岸地区の石狩II、分部越、樽川、北発寒観測所において、深度二〇~七〇メートルの層準にみられる。含まれる貝化石は、チヨノハナガイ、エゾタマキガイなど内湾性のものである。この貝化石包含層直下の泥炭の花粉群集は、トドマツがエゾマツあるいはアカエゾマツより優勢で、ニレ属、ハシバミ属、コナラ属が、前後の時代より増加しており、幾分温暖な気候を示している。14C年代は二万六〇〇〇年前ころである。
 以上のように、古三角州堆積物は、地上には分布しない最終氷期の海成層であり、当時の海陸の関係をさぐるために貴重なデータを提供してくれたのである。