札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ

新札幌市史 第1巻 通史1

第一編 札幌の自然史

第三章 野幌丘陵の地層

第三節 音江別川層と竹山礫層

 音江別川からは多量の貝化石や二、三の哺乳動物化石、植物遺体・花粉化石などが発見されている。
 貝化石群は下部シルト層から産出する。それらは巻貝二一種、二枚貝三四種、腕足類二種の計五七種で、内湾性の暖流系貝化石群集として特徴づけられるものである。すなわち、イボキサゴ・ウネウラシマ・アカニシ・イボニシ・アカガイの仲間(アカガイ・サトウガイ・サルボウ・クイチガイサルボウ)・ウネナシトマヤガイ・ミドリシャミセンガイなど、現在、北海道西南部より北の海域には生息していない暖流系の巻貝六種、二枚貝六種、腕足類一種、計一三種の貝化石が含まれている。とくに、現在では陸奥湾が北限で、しかも、太平洋沿岸海域のみにしか生息せず、化石としての産出記録も同じく太平洋沿岸域のみのイボキサゴが含まれていることは注目しなければならない。
 哺乳動物化石は基底礫層と中部の砂層との二層準から発見された。
 基底礫層のものは象の臼歯二個で、アルメニアゾウの仲間と考えられている。アルメニアゾウ(=トロゴンテリイゾウ)は、南のマンモスゾウといわれるメリジオナリスゾウ(ツレソイマンモスゾウはこの種と近縁なもの)と寒帯のいわゆるマンモスゾウとの中間型とされ、東洋ゾウとともに日本の中期更新世を代表する化石象である。この象がどんな経路で北海道へ渡来してきたのか、現在のところ明らかではない。
 中部砂層の化石は野牛の頭蓋骨の一部と右角の化石である。この産出層準は、象化石の層準より上位に位置しているので、この野牛は、アルメニアゾウの仲間と同時期に生息していたのではなく、かなり後期になってから渡来してきたと考えられるものである。

写真-7 アルメニアゾウの仲間の左下顎第1臼歯(左)
と野牛の右角化石(右、複製)

 暖流系の貝化石群を含む下部シルト層には、泥炭層がレンズ状にはさまっている。この泥炭層からいろいろな植物遺体が検出されている。それらは、エゾマツ・トドマツ・クルミ・ツノハシバミ・ハシバミ・ハンノキ・ブナ・コナラ・モクレンなどの毬果と葉片や木片、ミツガシワの種子など一三種におよぶ植物遺体である。また、ほぼ同じ層準の花粉分析によると、ハシバミ属・クルミ属・コナラ属など広葉樹の花粉が優勢で、針葉樹の花粉は少ない。このような植物遺体や花粉組成からみると、貝化石群の特性が示すのと同様に、この時期の古気候は現在よりかなり温暖であったことは明らかである。
 最上部のシルト層中の泥炭の花粉組成は、トウヒ属・モミ属が優勢で、前半に比較して寒冷になってきたことを示している。野牛はこの時期に対応しているのである。