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「伊能忠敬測量日記」解説  目次へ

渡辺 一郎(伊能忠敬e史料館 館長/伊能忠敬研究会理事 名誉代表)

 伊能忠敬は満 55歳から自らの意思で測量を志し、73歳で死没するまで、日々の出来事を日記に残した。これを調べることによって、我々は伊能測量の詳しい経過を知ることができる。
 日記には、彼が測量しながら現場で書いた「忠敬先生日記」という表題の 51 冊と、自身で後に清書した「測量日記」という名称の清書本 28 冊の2種類があり、いずれも千葉県香取市の伊能忠敬記念館に保存されていて、2010年6月29日、両者とも国宝に指定された。
 これまでにも測量日記解読書の制作は、さまざまな方々により試みられたが、本データは元伊能忠敬記念館館長佐久間達夫氏の「測量日記」解読を底本とし、伊能忠敬研究会内外の古文書と史実に詳しい諸兄姉の知識を結集して、徹底した校訂をおこない、「測量日記」清書本解読書の決定版を目指している。
 伊能測量の公式報告は、幕府に提出された輿地実測録 14 冊と大図 214 枚、中図 8 枚、小図 3 枚であるが、わざわざ清書本まで作成した「測量日記」も、準公式報告書として後世に伝えようとした記録と考えられる。
「測量日記」の記述は、天候、作業内容、宿泊地、訪問した名所旧跡や、送迎・案内など接遇にあたった諸藩の役人、町村宿場役人の名前などの事実を淡々と記し、感想、意見、批判めいたことは、ほとんど現れない。一見、無味乾燥であるが、旅先で課業終了後、暮夜独り、受け取った名札を整理しながら、一日の経過を綴った忠敬の想いに心をはせ、行間から事実を読み取ってほしいと思う。
「測量日記」の精読により、想像を遥かに超える巨大な事業規模を知り、作業内容としては、梵天の大きさ、海岸測線の渚からの距離、天測の頻度など、伊能測量の具体的なイメージを知ることができる。
「第 1 巻」と「第 2 巻」では、測量開始までの交渉経緯が「第 1 巻」に、また第 1 次測量の終了後から第 2 次測量開始までの経過が「第 2 巻」に、詳細に記録されている。「第 3 巻」から第 1 次測量の記録が現れるからわかりにくいが、測量記録のみを読む場合は、「第 3 巻」から始めていただきたい。

 本稿の取りまとめにあたり、左の各氏に絶大な御協力いただいた。皆様御多忙のなかを熱心に取り組んでいただき、有難く厚く御礼申し上げる。

伊藤栄子 古文書研究家、元伊能研究会員(第 1 巻~第 5 巻、第 9 巻〜第 10 巻、第 18 巻、第25 巻~第 28 巻)
河崎倫代 伊能忠敬研究会理事石川支部長、元高校教諭〔日本史〕(第 6 巻〜第 7 巻)
伊能楯雄 伊能忠敬研究会理事、伊能家縁戚、元香取市立伊能忠敬記念館館長(第 8 巻) 木村立彦 古文書研究家、所沢市新所沢東まちづくりセンター長(第 11 巻、第 14 巻)
鈴木純子、伊能忠敬研究会代表理事、元国会図書館課長(第 12 巻と第 13 巻の四国以外)
稲葉末明 古文書研究家(第 12 巻と第 13 巻の四国測量部分、および監修補佐)
山田 洋 伊能忠敬研究会会員、古文書研究家、松浦史談会(佐賀)事務局長(第 24 巻)
入江正利 古文書研究家、元伊能忠敬研究会会員(第 15 巻~第 17 巻、第 19 巻~第 23 巻) 坂本 巍・横溝高一・戸村茂昭・竹村基(データ化作業協力)

渡辺一郎 伊能忠敬研究会名誉代表(監修)
2015 年9月