河出書房新社・東京カートグラフィック/WEB版デジタル伊能図【お試し版】

WEB版デジタル伊能図ユーザーズガイド


データ制作者として  目次へ

猪原 紘太(東京カートグラフィック株式会社 取締役会長)

 伊能図の中に私の故郷の名前を見つけて以来、伊能忠敬が約200年前に歩いた道をいつか自分も歩いてみたい、という地図屋の想いからこの企画は始まりました。

 伊能図に朱色で描かれている測線(測量して歩いた街道・海岸線)を現在の地形図に落とし込むことは、想像以上に大変な作業でした。正確に描かれているといわれる伊能図ですが、さすがに1/25,000レベルの国土地理院の地図と重ねてもほとんど合いません。各図葉によってもまた1図葉の中でも相当なばらつきがあり、最終的に作業は忠敬が1歩1歩いて測量したと同じように伊能図を部分々々で重ね合わせながら、長年の地図屋の経験と感覚で地図を読みながら、測線を地理院地図上に落とし込みました(作業方法・仕様は資料参照)。

 この測線データの作成に3年半の年月がかかりましたが、地図の上で忠敬と同じ地球1周にあたる約40,000kmを歩いたことになります。途中何度もあきらめかけましたが、同時にわくわくするような新しい発見が次々とあり最後までやり遂げることができました。時代の変遷とともにダムの底に沈んでしまった街道もあれば、今でも新しい道路の片隅や基地の中にひっそりと残っている街道、地震による隆起でなくなってしまった湖、埋め立て等で大きく変化した海岸線、忠敬の訪れた多くの名所や神社仏閣など、「伊能図」には200年前の様子がしっかりと記録されていました。改めて地図が時代の変化を記録して残す重要なものであることを認識するとともに、17年かけ全国を歩いて測量し地図を残した伊能忠敬の偉大さを痛感しました。

 今まで難しいと思われたこのような作業がGIS(Geographic Information System)の技術を使うことで可能だと考え、作業には当社のコンパクトGISソフト「地図太郎」を使いました。世の中にはQGISやArcGISといった素晴らしい汎用GISもありますが、GIS技術者でもない私が作業を行うのに、このソフトなしで完成させることはできなかったと思います。手前味噌かもしれませんが、改めて地図太郎がGISの初心者に最適であることを確信しました。

 この「デジタル伊能図」は測線とともに、伊能大図に書かれている地名や測量日記、伊能大図画像をすべてデジタル化し簡単に閲覧できるようにしたものです。今後の歴史研究や地域おこしから個人的な趣味まで、多くの方々に使って頂ければ幸いです。