河出書房新社・東京カートグラフィック/WEB版デジタル伊能図【お試し版】

WEB版デジタル伊能図ユーザーズガイド


監修のことば  目次へ

村山 祐司(筑波大学教授)

 日本における近代地図の歴史は、約200年前に伊能忠敬が全国をくまなく実測して作成した伊能図から始まります。この精緻な紙地図を電子化するとともに、地名や測量日記などの付随情報をデータベース化して可視化や高度な分析を行えるようにしたのが、『デジタル伊能図』です。

 データの提供はシェープファイルですので,ユーザーは地図太郎をはじめQGISやArcGISといった汎用GISソフトで難なく操作でき、さまざまな地理空間分析を自在に行えます。たとえば、デジタル伊能図と地理院地図との重ね合わせによって、測線のずれなどを手がかりに伊能図の歪み・精度を科学的に検証できます。地理院地図を介して、地形図や標高図、空中写真、衛星画像、土地利用・条件図とのオーバーレイ解析も容易です。さらに、海岸線の後退・前進、干拓・埋め立て、山体崩壊、街道の消滅・経路変更など、過去200年にわたる日本列島の地理的変化を把握するうえで、重要なヒントを与えてくれます。また、約3.5万の地名がポイントでデータベース化されていますので、属性情報とのジオコーディングにより、当時の歴史統計や明治・大正期の人口・社会経済的データとのリンクも可能になります。目的によって活用範囲は無限に広がり、このデータベースの学術的な意義はきわめて高いと言えます。

 『デジタル伊能図』は、日本における地理空間データの歴史的な礎であり、地理学や歴史学は言うに及ばず、測量学、都市計画学、土木工学、地球科学などさまざまな分野で今後の応用研究が期待される未開拓の宝の山です。日本に限らず、19世紀初頭における国土全体を精密にデジタル化した大縮尺のベクター地図・ラスター地図は世界的にみても例がなく、画期的なデータです。海外の研究者からも注目を集めるに違いありません。


村山祐司
筑波大学生命環境系地球環境科学専攻・空間情報科学分野。専門:GIS/空間分析/都市地理学/交通地理学。1977年、東京教育大学理学部地学科地理学専攻卒。1979年、筑波大学大学院地域研究科修士課程修了。トロント大学大学院。1987年、三重大学人文学部助教授。2005年、東大空間情報科学研究センター客員教授。最近のGIS研究:明治・大正・昭和初期の統計データを電子地図化(広域)。